AEVE ENDING




「…は、」

隙間から漏れた雲雀の吐息は、倫子と同じように荒く、熱い。
そのことに全身が粟肌立ち、縫合したばかりの傷が震えた。

再び隙間なく閉じられた呼吸器官と、身勝手に遊ばれる咥内。

───これは、口付けなんかじゃない。

(…窒息する)

こいつは。

(…私を、殺す気だ)






「…っ、せ」

こんなの、あんまりだ。

「、ひ、っ」

隙間から漏れた醜い嗚咽に、雲雀の侵略が一端、退く。

たすけて。



「…っあんたにだけは、知られたくなかったのに…っ」

顔を腕で覆い、小さく身を丸める。
まるで殻に閉じこもる小さなこどものように。


「───…何も知らないで、普通に、していてくれたら…」

それで、良かったのに。

この全身を苛む傷は過去のもの。
あの苦痛と侮辱の、ただの傷痕だと。


「あんたには…っ、わからない」

あの屈辱を。
あの辱めを。

知らない男達に体を開かされ、内臓を弄られ、身体の部位という部位で遊ばれ、良いようにされた、私の。


「雲雀が、なにも知らないことが…っ、私の救いだったのに…!」

だって笑いかけてくれたから。
ほんのたまに、それでも私に、笑いかけてくれたから。

―――だから。



「……っ、」

赦される気でいた。
私は雲雀を、陵辱した存在だ。

それを、この醜い私を、なにも知らない雲雀は甘受してくれていたから。

―――なのに。




「…なんで、暴くのぉ…!」


嫌だ。

知られたくなかった。

体中に走る醜い傷痕にも、皮膚を裂かれて内臓を引きずり出されて、痛みにのたうち回り、最終的にただの生きた肉塊になった過去なんて。


「恥ずかしい…、」


いやだ。

わたしは。

知られたくなかった。
怯えてばかりの弱い私なんて。

うちが恋しくて、奥田にも見られないように隠れて泣いていた私なんて。

辛くて辛くて痛くて苦しくて、死にたがってた臆病な私なんて。


―――知られたくなかった。





< 426 / 1,175 >

この作品をシェア

pagetop