AEVE ENDING
「…っ、ぅあ」
もう嗚咽しか、出ない。
初めて会った雲雀という男は、本当に真っ直ぐで強くて高潔で穢れのない、純粋な人だったから。
だから益々、自分が恥ずかしくて、惨めで、だから。
だから。
絶対に、知られたくなかったのに。
(だってそれは、)
ひくりと震える肩が情けない。
こんな醜態は、曝したくなかった。
(また、軽蔑される、)
顔を上げたくない。
涙が止まらない。
唇は震えたまま、顔を隠した腕は硬直して動かない。
真っ暗だ。
雲雀はやはり、なにも語らない。
(惨めだ。これじゃ)
あんまりだ。
けれど、そろり、やがて触れてきた柔らかな感触に、心臓が震えた。
「…言っておくけど」
静かな声が降ってくる。
それは優しい雨のように、倫子の涙を掠めて、慰めた。
「なにも知らないまま、橘を傍に置く方が、僕には耐えられない」
なにも知らずに、素知らぬ顔で所有する浅はかな、真似を。
それは赦しであろうか。
───それは。
「橘、」
柔らかな声が降ってくる。
無機質なのに、酷く優しく感じる、それは。
「ひば、…」
不細工な顔が雲雀を見た。
ぐちゃぐちゃな表情があまりにも憐れで、雲雀はその乱れた頭に手を伸ばす。
指先が届く寸前、びくりとそれが震えた。
(───あぁ、憐れ、だ)
「…橘」
呼び掛ける。
柔らかに、艶やかに、まるで。
「…ひば、り」
頬を繰り返し撫でる指は同情だろうか。
慰められる。
痛めたのは、目の前のこの男である筈なのに。
「…どこで、話を」
頬を撫でられながらも、俯くしかできない。
雲雀を、直視できない。
(この汚い体の秘密をどこで?)
今の倫子には、せめてそれを尋ねるだけで精一杯だった。