AEVE ENDING
「聞いているんですの?」
美しい薔薇が綻びなく咲き乱れる、季節感など年中感じられることのない時の止まった庭園は、今日も美しかった。
普段ならばその薔薇を眺めながらティータイムを楽しむはずの彼女が、今日は機嫌が悪い。
この屋敷の主人───つまり、彼女の夫が仕事で使用する書斎に閉じこもり、怒鳴り散らしていた。
「早急に雲雀さんからあの娘を引き離す必要があります」
先程から怒りをぶつけられている夫は苦笑した。
普段は物静かな彼女が焦燥を露わにしている。
余程、あの橘倫子という少女が息子の傍にいたことがショックだったらしい。
(―――当然だ。我々が彼女にした仕打ちはあまりにも…)
思い出して、鳥肌が湧いた。
血塗れの小さな身体に繋がれた極彩色のコード。
その光景の、甘美な罪深さ。
「そう急かさなくても大丈夫さ」
夫の暢気な言葉に、妻は細い柳眉を釣り上げた。
「なにを悠長な。もしあの子が雲雀さんの命を狙っていたとしたら?四六時中一緒にいるのに、ほんの一瞬の隙で雲雀さんを───」
そうして彼女は絶句した。
全く激しい庇護愛だ。
「…僕達の息子が、彼女のような矮小で下卑た女に隙を見せると思うのかい?」
あの冷徹で凶暴な神が、たかだかひとりの、憐れな女に。