AEVE ENDING
目の前に置かれた二対のティーカップ。
大理石の床に反射する薔薇の絵が美しい陶器のそれは、平民には手が届かない高級品だ。
「割らずに浮かせてごらん」
それを指差すのは、雲雀の綺麗な指。
美しいものに囲まれて、倫子はいま、最大の集中力を求められていた。
―――遡ること、一時間前。
海洋清掃で一番役に立たなかった生徒―――結果的に、やはり倫子が奥田発案の罰ゲームを受けることになったのだが。
『みっちゃんにとってなにが一番キツいって、雲雀くんのスパルタだと思うわけ』
という経緯で、現在倫子は自室にて絶賛スパルタ特訓中、サポートバイ、雲雀。
「割っても構わないけど、割ったらお仕置きが待ってるよ」
「それは果たして割っても構わないというんでしょうか、先生」
「口答えはもっと赦さない」
「…っ、いってー」
ティーカップを前に正座する倫子の頭を殴り付ける雲雀…否、先生は、奥田に押しつけられたにしては爽やかに倫子をいたぶっていた。
(…あ、だからか)
集中。
集中。
しゅうちゅう…。
静止していたティーカップがカタリと小さく揺れる。
ぐらぐらと針が振れるように振動するその陶器に、倫子は意識を注ぎ込むように唇を噛み締めた。
カタカタと小さな音が静かな室内に響く。
雲雀といえば、監督さながらにソファに腰掛け、それを眺めていた。
その背後からの視線が、痛い。
(…いやとにかく、今は目の前のティーカップに集中しろ、倫子)
集中は苦手だ。
しようとすればするだけ、意識は様々なものへと霧散して、集中できない。
(…物体の重力操作は、先ずその物体に照準を合わせて、そしてそれ以外を完全にシャットアウトする。そして標的が浮遊するイメージを能力に乗せて………)
「む、」
集中、集中、しゅ…。
(あ、)
パリンッ。
―――割れた。
無惨にも真ん中から真っ二つに割れた片方のカップに、倫子は脱力する。
慣れない操作に全身の疲労が激しい。
疲れた。