AEVE ENDING
(…苦しい)
その、全てが。
円周する痛みと柔らかさと、それから。
「ぅ、あ」
息絶えてしまいそうな、乱暴な交じり合い。
冷たい海水に体を半分浸したまま、けれど雲雀はそれを気にしたふうもなく、まるで無我夢中の体で、倫子の唇を、舌を、魂を吸っている。
(…ごめんね)
気付けば喉の痛みは既になく、雲雀の咥内には倫子から流れ込んだ海水の異臭と汚濁が満ちているだろう。
雲雀のざらついてぬめる舌が倫子の歯列を撫でて、歯の隙間にこびりついた汚水すら啜ってゆく。
「…ひば、」
倫子が声を上げれば、更に深く、深く深く。
背中を掻き毟るように抱く腕は固くて痛くて、こいつはこんなに柔らかなのに男なのだと、わざわざ知らしめているようで。
そして無力なこの腕が、自然とそれを求めている。
首に腕を回せば、更に深くなる、唾液と汚濁の交じり合い。
―――泣きたくなる。
求めてしまうのは当然なのだ。
(だって、私は…)
パシャン。
バランスを崩した倫子の腕が雲雀の首から離れ、水面を叩く。
傷口に塩水が滲みて身を震わせれば、急に世界が廻った。
「───…っ」
唇が離れたのと、背中が砂浜に押しつけられたのはほぼ同時だった。
大した衝撃もなく、反射的に目を開けた───他方からの意志により変化した自らの状況を確認するための、半ば本能ともいえる素早さで。
そして、後悔する。
「…ひば、り」
―――まっさらな、眼。
私を引きずり込む、深淵の更に、奥。
それから、ぞっと鳥肌が立つほどに艶めかしい、濡れた口許に。
一気に、正気に戻った。
「…ごめん」
窺うでも侮蔑するでもない視線が逆に怖い。
まるで静かな湖面のような瞳は、風に吹かれても波すら立たないように。
(…死にそう)
本当は、まだ、足りない。
もっともっと落ちて、それから融けて交ざって消えちゃえばいいのに。