AEVE ENDING
(冷たい)
なにもかも、底冷えするように。
「…っ、」
(なんでこんな目に遭わなきゃならないんだろ…)
私ばかり、何故。
冷酷に星から吐き出される潮風が安らぎを削いでいく。
考えても仕方ないことを、考え続けてしまう。
(うちに帰りたいな、)
本来なら、こんな場所にいる必要はないのに。
父さんと母さんに、会いたい。
弟妹達に、会いたい。
(母さんのあんまり美味くないご飯を食べて、筋肉質な父さんと駆けっこして、遊びたがりなみんなと隠れんぼして、木登りして、それから)
父さんに豪快に頭を撫でてもらって、母ちゃんと漬け物作って、弟妹と川の字になって昼寝して、大好きだって、みんなみんな抱き締めて。
―――おかえり、って。
「…っ、」
帰りたい。
うちに、帰りたい。
「ぅ、え…、っ、」
ねぇ、誰か。
馬鹿みたいに泣いてしまう私を抱き締めて、慰めて、愛おしんで。
誰か誰か、誰、か。
「、ひば、」
ひばり、ひばりひばりひばりひばりひばりひばりひばり、ひば、り。
「ひばり、ぁ…」
助けて、もう、一人で立ってられない。
「…っ、ぅぁ、ぁ」
助けて、助けて、助けて。
(誰も、助けてくれない)
独りぼっちだ。
「ひば、り」
『―――橘』
『橘…、』
もう、立っていられない。
耳に残る、あの声が私の醜い体を。
『橘…』
助けて。
たすけて。
「―――橘」
声が、後ろから、鼓膜にわんと響いた。
凛としたその声音に、脳髄が灼け切れそうになる。
「、」
脚が、震える。
空気と隔てなく露わになった皮膚が、期待に粟立った。
全神経が、背後の気配に向いている。
息を飲んで振り向けば、真っ黒な髪をした男がそこに立っていた。
真っ直ぐにこちらを見る目は、変わらない。
(───あぁ、目眩が、する)