AEVE ENDING







―――早朝。

独特の空気が、剥き出しの皮膚を刺す時間帯。

箱舟で起きている者は少ない。
自室から現れた雲雀は、箱舟正面玄関へと足を向けていた。

閑散とした回廊に、昼の騒がしさはない。
この時間に行動して正解だったと、雲雀が小さく息を吐けば。



「オッハヨーネー、ひーばりん」

背後から掛けられた間の抜けた声に、一気に気分が落ちた。

聞き覚えのあるその声の主は、雲雀が今一番会いたくない相手だと言える。
それでも足を止めて振り向けば、いつもと同様に咥え煙草をした奥田の姿。


「…なにか用?」

そのやる気のない胡乱な眼を見るだけで苛々する。

昨夜見たビジョンのなかにもいたであろう、この男。


「いいや?偶々さ、煙草吸いに出たところ、君を発見したからさ」

これといって用はない、と言う奥田に、しかし雲雀は冷ややかな視線を投げかけたまま。


「それなら話しかけないでくれる?僕にも用はないから」

踵を返し、再び玄関へと足を向ける。
朝だけ垣間見える太陽光の名残が、雲の隙間から回廊へと差し込んでいた。



「───ねぇ、どこに行くの?」

今度は気の抜けたそれではなく、どこか堅い、真剣味を帯びて、しかしなにか畏れているような。

思わず、嘲笑が漏れた。



「決まってるでしょう。いい加減、僕のものを回収しなきゃ」

夜も寒くて眠れやしない。

戯れに吐き出したそれに固まってしまった奥田を嘲笑いながら、雲雀はもう足を止めなかった。


燻っている時間は終わり。

なにを考えようと答えなど見つからない。



(───ならば、)

先へ、進むしかないのだ。

幸い、無計画に突っ込んだとしても巧くやる自信が雲雀にはあった。





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