AEVE ENDING
「…、っ」
―――思わず、小さな声を上げてしまった。
雲雀が溜め息のように、笑う。
それでも寝たフリをやめられない倫子を、嘲笑っているのか。
暗闇に閉じていた瞼を通し、浴槽の淡い白さが眼球に染みる。
目を閉じたままでも、倫子に翳る影は雲雀のものだと容易に想像がついた。
触れられた先から、焼けて、爛れていきそう。
まるで神聖な光に照らされた泥人形のように。
「…」
喉を反らされる。
かたりと頭をバスタブに凭れかけさせられた倫子を、雲雀はじ、と観察しているようだった。
(…なに考えてんだ、ばか)
触るな、見るな、どっか行けよ!
そう叫びたいのに、叫べない。
「…っ」
つ、と上唇と下唇の間を爪で擽られた。
ぞくり、と背筋を這う妙な感覚に、全神経身に緊張が走る。
「…橘」
熱っぽい。
それが演技なのか、または本音なのか倫子に判断できるわけもない。
「橘…」
―――耳朶に空気が触れたと思ったら、柔肉をじゅう、と吸われた。
バシャン…っ。
跳ねた。
(…なにがって、私の体が)
「下手な芝居」
馬鹿にしたような響きのそれに、そろそろと瞼を上げればやはり、殷懃なまでの微笑を浮かべた雲雀がそこにいた。
「…出てけ、変態」
辛うじて吐き出した悪態は、身を縮みこませる隙を作ってくれた。
湯が多少なりとも濁っていてよかったかもしれない。
見られたくもない素っ裸が、白日のもとにカーテンもなく曝されるところだ。
「君の貧相な体なんか興味ないよ」
「しれっと読んでんじゃねーよ」
「オープン過ぎる君が悪い。そんなまな板でよく平然としてられるね…」
まないた?
ざけんなコラ。
「その憐れむような眼、やめろ、殺すぞ」
「殺せば?」
「、…こ、」
「ごめん。君は僕には勝てないね。力でも体力でも、色気でも」
「犯す」
「なんて下品」
なんと不毛な会話か。
会話と呼べるのかどうかも怪しいが、意味のない言葉が浴室に虚しく響いては墜ちてゆく。