AEVE ENDING





『…、』

小さな身体が激しく痙攣した後、夢現のようにゆっくりと、あまりにも頼りなく起き上がる。

ふらつく足はまだ小さく痙攣しており、関節が微妙にズレてしまったのか、小さく柔らかなこどもらしいラインを描いていた体型は、おかしく歪んでいた。



『…うちから細胞を破壊され、正気を失い、ただの獣と化す』

それは、小さな獣だった。
血走った眼、小さな唇から垂れ流される大量の唾液、がぽり、耳から吹き出す、鮮明な血液。

ぜェ、と吐き出された呼気は、幼く愛らしい少女のものではない。

まるで餓えた、獣のものと、同じ。



―――狂気、だ。








『小さな獣は君に牙を剥くだろう』

さあ、橘、君は獣を狩らなければね。







『ねーちゃん!おねーちゃん』

ビジョンが、混濁する。

『やだああっ!おねーちゃんと一緒じゃなきゃやだ!箱舟になんかいっちゃやだあっ』

古い記憶だ。
暖かなそれは、彼女がどれだけ妹を慈しんでいたか伝わってくるほどの。


『おねーちゃん、だいすき!』


愛らしく笑う、姉によく似た、少女は。







『…、』

ビジョンの中の橘が、聞き取れない声で、呟いた。

それはきっと、少女の、愛しい妹の名であったのだろう。



『ごめん…、』

獣のように倫子の肉を貪る少女に、倫子が手を上げることはなかった。
爪が腸に喰い込もうが、歯で耳を噛みちぎられそうになろうが、決して。

泣きながら、視界すら見えていないほど泣きながら、それほどに涙を湛えながら、己を貪る小さな身体を、ただただ、抱き締めていた。


『…っ、ごめん、ね』

悲鳴のような謝罪は、もう、少女には届かない。






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