黒くなった、天使
長い長い年月をかけ
城は風化して、
崩れ落ち、
地下室は土の中になり
城跡には木々が成長して、
小さな国自体が
大きな森へと生まれ変わりました

地下室には
針の穴ほどの隙間が
地上へ繋がっていて
そこから入りこむ一筋の光で
天使は昼と夜の区別をつけます。
死に絶えていた、
妖精が最後に触れた儚石と
青水晶は
長い間地下室にいたので、
そこが存在場所だと認識して
再び蘇えり、
天使に
海の音と空の色を思いださせます
ほんの小さな穴から射し込む、
一筋の光に照らされる
二つの石は
妖精との儚い夢のようです

何度か人間が滅び、
何度か人類が誕生しました。
その度に
この森は人の手で
壊されそうになりますが、
不思議な力が働き
人々は破壊を諦めます

南の島は
大きな大きな
大陸に変わっていました。
人の想像を遥かに越えた
時の流れの中で
天使は小さな石の音を聞き、
色を覗いています。
変わらない幸せの中にいます。

そして地下室に
あの妖精が現れました
良く見ると羽は天使の羽でした。
頭には光りの輪が輝いてします。
妖精は天使になり、
神様に頼んだのです

傷ついた天使が
また元の天使に戻れるように、
長い間祈っていたのです
なんとか、
神様の許しをもらい、
連れ戻しにきました
しかし天使は
そんな事より
再会できた喜びで
胸がいっぱいでした。
「僕は
神様の元に戻れなくてもいいです、
あなたの腕に抱かれ、
あなたと共にたった一度、
大空を飛べるだけでいいです、
妖精だったあなたに出会った頃からの
僕の夢です」

天使になった妖精は
天使を抱えて大空を飛びました


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