黒くなった、天使
止められない涙を流している時に
天使はふっと思いました、
感じました
それは、
自分に黒い刺青をして
羽で糸を作った魔術師や
思い通りに操った王様や、
知らないフリをする人々、
皆を恨んでいた自分なんか
もう、どうでもよいと思え、
逆に
皆を許せる気持ちに
移り変わっていく感じが芽生えて
そして地上に追放した神様に
感謝をしました
今はただ好きになってしまった
妖精だけを想える
この状況に感謝しました。

でも涙は止まりません

その時、
檻の中から白くか細い手が、
傷だらけの天使の腕に
優しくのります、
妖精の手です。
妖精は儚い笑みを浮かべ
言いました
「そんなに沢山の涙を
流させてしまった私を
許して下さい」
妖精は美しい羽を
大きく広げました
天使がその日にとって来た儚石に、
妖精は耳を近づけ
瞼を閉じ聞き入ります。
とても幸せそうな顔です。

天使は立ち上り鎖を引き千切り、
いとも簡単に
山のような岩石を叩き割りました
体が軽くなった天使は
風のような速さで
山へ駆けて行き、
青水晶を探しだし
妖精の元へ帰ってきて、
始めて手渡しました
とても、とても、
優しい目で妖精は
青水晶をのぞき込み言いました
「ありがとう」

天使は石の牢屋を砕き、
妖精の体に巻き付いていた
自分の黒い糸を千切り捨て
妖精を逃がしました。
その時天使は
自分の指を切ってしまい、
黒い糸は一瞬で赤く変わりました。

天使の事を心配した妖精は
なかなか飛び立とうとしないので
天使は、死に絶え、
山積みになっていた
儚石と青水晶を
妖精にぶつからない程度に
投げます
「僕は大丈夫、僕は大丈夫」
と言いながら石を投げます
妖精はなんとか飛び立ち、
小さな国を去りました。




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