駆け抜けた少女【完】

「青春だねぇ―…」

「青春? 何言ってるんですか」


袖に腕を通し、フムフムと頷いている永倉に、呆れ顔を送る沖田。


わかってないねぇ。 平助も総司も。


二人に遅い春が訪れていることに永倉だけが気づいていた。



そんな二人は、前方を歩いていた芹沢が何やら騒いでいることに気づき、足早に追いついて来た。


橋の中央に島田よりも大柄でふくよかな一人の男が仁王立ちしているのを見て、眉根を寄せた永倉は、島田に何があったかを聞く。



島田の話によれば、橋を渡ろうとした時前方から一人力士が歩いて来て、芹沢の前に立ったまま道を譲らないと言う。


芹沢が「退け」と威嚇したところで、力士は「たかが浪士の分際でデカい態度を取るな、お前が退け」と、埒のあかない睨み合いが続いていた。


「厄介なこった……」

チッと舌打ちした永倉は、斉藤の切羽詰まる様子に時間をくうわけには行かないことを知る。


――が、どうしたものか。


あまり騒ぎを大事にするわけにもいかないだろうと思った矢先だった。



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