駆け抜けた少女【完】

「止めて下さいっ!」


永倉、沖田、以蔵は目を見開き状況を確認しようとする。


沖田の振り下ろした刃を、矢央が以蔵の鞘で受け止めていた。

「鞘でっ! って、お前なにやってんだ!?」


以蔵を庇うために、以蔵の前に潜り込み鞘を抜き取ると瞬時に刃を受け止める。

そんなことを、この少女がやったのかと周りはざわついた。



「止めて下さい。 お願いだから、今回は見逃して下さい!」

「……私達に、彼を見逃せと?」
「……はい」


沖田は笑みを消したまま、冷たい眼差しで矢央を見下ろしていた。


鞘で受け止めているには、そろそろ限界が近かった。


沖田は矢央だと気づいた瞬間は一瞬力を抜いたが、先程の発言の後また力を込めてきている。


「矢央さん、私は以前言いましたよね。 私にとって佐幕や攘夷なんて関係ない。 しかし近藤さんや土方さんの敵は……私の敵なんですよっ!」

「ウッ!」


グゥンッと、更に重さが加わり、矢央一人の力では押さえきれない。


「いくらあなたでも、こればかりは聞けません。 今すぐそこを退きなさいっ」


やはり頼みは聞き入れて貰えないと知り、矢央は唯一空いていた足で沖田の拗ねを蹴った。


「ぐわっ!!」


力が緩んだ隙に、刃が深く突き刺さったままの鞘を沖田に向け押し返し、負傷した以蔵の腕を掴んだ矢央は


「以蔵さん、死んだらごめんなさいっ!」

「は? おいっ、えええっ!?」

叫び声を上げながら、矢央は無我夢中で以蔵を橋の下に投げた。

川が流れているとはいえ、一か八かの賭に近い。


「なっ! コラッ、矢央! 待ちやがれっ!」


永倉は、以蔵を投げ落とした矢央の腕を掴もうと腕を伸ばしたが遅く、矢央も自ら飛び出した。


「永倉さんっ、沖田さんっ、ごめんなさいっ! でも、今は捕まるわけにはいかないんですっ」


「ばっかやろうっ!!」


空かした腕は空気しか掴まなかった。


.
< 435 / 592 >

この作品をシェア

pagetop