駆け抜けた少女【完】
「止めて下さいっ!」
永倉、沖田、以蔵は目を見開き状況を確認しようとする。
沖田の振り下ろした刃を、矢央が以蔵の鞘で受け止めていた。
「鞘でっ! って、お前なにやってんだ!?」
以蔵を庇うために、以蔵の前に潜り込み鞘を抜き取ると瞬時に刃を受け止める。
そんなことを、この少女がやったのかと周りはざわついた。
「止めて下さい。 お願いだから、今回は見逃して下さい!」
「……私達に、彼を見逃せと?」
「……はい」
沖田は笑みを消したまま、冷たい眼差しで矢央を見下ろしていた。
鞘で受け止めているには、そろそろ限界が近かった。
沖田は矢央だと気づいた瞬間は一瞬力を抜いたが、先程の発言の後また力を込めてきている。
「矢央さん、私は以前言いましたよね。 私にとって佐幕や攘夷なんて関係ない。 しかし近藤さんや土方さんの敵は……私の敵なんですよっ!」
「ウッ!」
グゥンッと、更に重さが加わり、矢央一人の力では押さえきれない。
「いくらあなたでも、こればかりは聞けません。 今すぐそこを退きなさいっ」
やはり頼みは聞き入れて貰えないと知り、矢央は唯一空いていた足で沖田の拗ねを蹴った。
「ぐわっ!!」
力が緩んだ隙に、刃が深く突き刺さったままの鞘を沖田に向け押し返し、負傷した以蔵の腕を掴んだ矢央は
「以蔵さん、死んだらごめんなさいっ!」
「は? おいっ、えええっ!?」
叫び声を上げながら、矢央は無我夢中で以蔵を橋の下に投げた。
川が流れているとはいえ、一か八かの賭に近い。
「なっ! コラッ、矢央! 待ちやがれっ!」
永倉は、以蔵を投げ落とした矢央の腕を掴もうと腕を伸ばしたが遅く、矢央も自ら飛び出した。
「永倉さんっ、沖田さんっ、ごめんなさいっ! でも、今は捕まるわけにはいかないんですっ」
「ばっかやろうっ!!」
空かした腕は空気しか掴まなかった。
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