駆け抜けた少女【完】

「平助…良かった…」

「…し…んぱち…さん……」


僅かに残る意識で、永倉に手を伸ばす。

血に染まる手を握り永倉は、何度も「大丈夫だ、助かる」と繰り返した。


死なせてたまるか。

永倉は止血をするために、己の額当てで藤堂の額をキツく縛った。


気休めにしかならない行為に、一刻も早く医者に見せなければと辺りを見回した永倉は愕然とする。


狭い廊下の至る所に死体があり、襖は破れていたり倒れていたり、柱や壁には血や肉片が飛び散っていた。


「…………」


そしてまだ戦いは終わってなどいない。


「新選組っ! 死ねぇいぃぃっ!」

「…くっ! 死に損ないぐわぁっ!」


しまった! 油断していた。


藤堂を助けるために刀を床に置いていたため、背後から斬りかかれ避けるので精一杯だ。



ズザザザ…………


藤堂を庇いながら相手の攻撃を避けた時、己の手に熱が走った。


「……チッ」

「ウリャァァァッ!」


二度目の攻撃が来る。

永倉は刀を素早く構え―――突いた。


己に覆い被さる亡骸を押しのけ、カタッと床に刀が落ちる。


「ッッ――。 くそっ…」


見れば親指と人差し指の間が、見事にぱっくりと開いているではないか。

ピリピリと手が痺れ、肉が盛り上がり熱を持っていた。


それでも、藤堂を安全な外へと運ぼうと試みるが敵がそうはさせてはくれず。


「永倉さんっ!!」


その凛と響く声は、浪士を挟み反対側からした。

目を凝らし見れば、此処にはいないはずの矢央の姿があり、永倉は「馬鹿やろうっ!」と叫ぶ。

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