駆け抜けた少女【完】

「お華さんも、そんな顔すんだね?」


クスクスと笑う矢央につられたのか、お華もクスクスと笑う。

闇が少しずつ光に包まれていった。


お華の心が洗われているのだろう。


「矢央さん、私が弱いばかりに、あなたを巻き込んでしまいました。 そのことは、深くお詫び致します」

「え……いいよ! なんか、今更だし!」


頭を下げるお華に、慌てる矢央。


最初は恨んだけど、今では本当に感謝しているのだ。

普通に暮らしていたら、経験できなかったことが沢山ある。

貴重な体験は、きっとこれから生きて行く中で役に立つだろうから。



「それで、矢央さんに選択してほしいことがあります」

「選択?」

「はい。 あなたの時代に、帰るか帰らないか」

「―――――え」



お華の発言は、衝撃を与えた。

しかし、戸惑う暇なくお華は話を続ける。



「今ならば残された力で、あなたをあなたの生きるべき時代に帰すことも可能なのです。
此処で生きるか、未来で生きるか、あなたが決めて下さい」

「生きる―…場所」



本来ならば、願ってもない申し出のはずなのに、手を挙げて喜べない。

ようやく自分の進む道を決めたばかりで、まさか帰りの選択を迫られるとは思いもしなかったからである。


戸惑う矢央の肩に、ポンっと重みがのし掛かり、其方に顔を上げた。


「良かったじゃねぇか。 帰れるんだぞ」

「永倉さん……」

「帰るとなれば、処分はなしにしてやる」

「しかし、それでは藤堂が寂しがるだろうな」

「土方さん、斉藤さん…」



どことなく、皆目を逸らす。

既に湧いた情は、彼らにとっても別れを惜しませた。



「矢央さん、きっとあなたの選択は間違いではないですよ」



ニコッと微笑む、沖田。

その沖田の隣には、お華が微笑みながら頷いている。


矢央は決意した―――

.
< 556 / 592 >

この作品をシェア

pagetop