駆け抜けた少女【完】
「お華さんも、そんな顔すんだね?」
クスクスと笑う矢央につられたのか、お華もクスクスと笑う。
闇が少しずつ光に包まれていった。
お華の心が洗われているのだろう。
「矢央さん、私が弱いばかりに、あなたを巻き込んでしまいました。 そのことは、深くお詫び致します」
「え……いいよ! なんか、今更だし!」
頭を下げるお華に、慌てる矢央。
最初は恨んだけど、今では本当に感謝しているのだ。
普通に暮らしていたら、経験できなかったことが沢山ある。
貴重な体験は、きっとこれから生きて行く中で役に立つだろうから。
「それで、矢央さんに選択してほしいことがあります」
「選択?」
「はい。 あなたの時代に、帰るか帰らないか」
「―――――え」
お華の発言は、衝撃を与えた。
しかし、戸惑う暇なくお華は話を続ける。
「今ならば残された力で、あなたをあなたの生きるべき時代に帰すことも可能なのです。
此処で生きるか、未来で生きるか、あなたが決めて下さい」
「生きる―…場所」
本来ならば、願ってもない申し出のはずなのに、手を挙げて喜べない。
ようやく自分の進む道を決めたばかりで、まさか帰りの選択を迫られるとは思いもしなかったからである。
戸惑う矢央の肩に、ポンっと重みがのし掛かり、其方に顔を上げた。
「良かったじゃねぇか。 帰れるんだぞ」
「永倉さん……」
「帰るとなれば、処分はなしにしてやる」
「しかし、それでは藤堂が寂しがるだろうな」
「土方さん、斉藤さん…」
どことなく、皆目を逸らす。
既に湧いた情は、彼らにとっても別れを惜しませた。
「矢央さん、きっとあなたの選択は間違いではないですよ」
ニコッと微笑む、沖田。
その沖田の隣には、お華が微笑みながら頷いている。
矢央は決意した―――
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