伽羅子
床に広がる、粘ついた血液の感触。

俺から逃げようと這いずったのだろう。

床には伽羅子の血塗れの手形がそこかしこに残っていた。

こういうのを地獄絵図というのだろう。

直視に堪えられる光景ではなかった。

「……っ」

さっさと伽羅子の死体を片付けて、証拠隠滅を図らなければならない。

が、俺とて人の子だ。

殺人を犯した後、何食わぬ顔で死体を処分できるほどの胆力は持ち合わせていなかった。

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