ペアリングを外して

 とりあえず飯を食おうと、歌舞伎町に向かって歩き出す。

「居酒屋さんでいい?」

「何でもいいよ。飯さえ食えれば」

「あはは、助かる~」

 本当なら、男の俺が店を選んだり予約したりするべきところなのだろう。

 元々姉御の三村は、世話好きなのかこういうのが得意らしい。

 それにしても……ドキドキする。

 並んで歩きながら見下ろした三村は、まつげが長くて色っぽく見えた。

 手、繋ぎたい。

 ダメかな?

 三村から言ってこないかな。

 いやいや、俺、男だろ。

 行くなら自分から行けよ。

 自分の中で葛藤が始まる。

 そんな時だった。

「すみませーん」

 声がしたのと同時に、男が並んで歩き始めた。

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