桜の下で ~幕末純愛~
沖田は納得できない顔つきをしている。

美沙子が話を続けた。

「沖田さんが帰る方法が見つかれば返すわ。必ず」

「…解りました。見知らぬ時代ではお二人を頼りにするしかありません。お預け致します」

渋々、刀を渡す。

桜夜は刀が預けられた事にホッとした。

とりあえず凶器がなくなったぁ~。

ん?歴史マニアはマニアじゃなくてホンモノ?

「さて、次は服ね。」

だよね~。その格好じゃ、マジでマニアだもんね。

「ふく?あぁ、私の格好と、お二人の格好は違いすぎますね。“みらい”は皆さんその格好ですか」

「ええ。洋服というのよ。主人の服が残っているの。多分、それが着られると思うわ」

…お父さんのかぁ。何か複雑かも。

「お借りしてもよろしいのでしょうか」

「ええ。いいのよ。主人は亡くなってるの。あ、嫌かしら?」

沖田は首を振る。

「いいえ。…それは失礼致しました」

「いいのよ。もう、昔の話よ。気にしないで。さて、服は問題ない様だし、寝るところは客間が空いてるから、そこにしましょうか」

美沙子はにっこりと笑い、ソファから立つ。

「さて、大体はこれで解決。今夜はお祝いだからね。下ごしらえ、始めなきゃ」

え?解決?お母さん、簡単すぎないっすか~?

ポカンと口を開けている桜夜を見て、美沙子が笑う。

「ほら、沖田さんを客間に案内して。それから沖田さん、多分あなたの時代とまるで違うと思うの。分からないことは桜夜に聞いてね」

美沙子はキッチンへ小走りで消えていった。

お母さん…それで?その後放置?

どうすりゃいいのよぅ。

と、とりあえず、案内よね。

「あの…部屋に案内します」

すると沖田は目を輝かせながら質問を始めた。

「部屋もいいのですが、これは何ですか?こんな黒い茶は初めてです」

桜夜が飲み残していたコーヒーを指す。

ぷっ。目が輝いてるしぃ~。何か可愛いかも。

「これはコーヒーって飲み物です」

「こぉひぃ?」
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