桜の下で ~幕末純愛~
「さて、早速だけど。沖田さんは寝起きするところがないでしょう?帰る方法が見付かるまでここに居ない?」

美沙子の言葉に桜夜は驚いた。

え?いきなりそこ?

「ちょ、ちょっと、お母さん。いきなり何言ってんの。普通、他に話があるんじゃないの?」

慌てる桜夜に比べ、美沙子は落ち着き、微笑んでいた。

「あら、ここに来た経緯はさっき聞いたし、どう考えても沖田さん一人で衣食住、無理でしょ。だったらそれが最優先の話しじゃない」

ぐ…ごもっとも…。けどさっ、まだ信用しきれないよ。

そこで沖田が口をはさむ。

「この“そふぁ”に座りながら私なりに考えてみました。やはり“たいむすりっぷ”とやらをしたとしか答えは見付かりませんでした」

真っ直ぐに二人を見つめ、話す。

「ですので、お言葉に甘えさせていただき、私の時代に戻れるまでお世話になりたいと思います」

あぁ…やっぱり。いや~な展開だよ。

「現状が見えてきたら、気が楽になりました。有難う御座います」

にっこりと微笑む沖田に美沙子も笑い返す。桜夜は苦笑いしかできなかった。

「じゃ、沖田さんこれから宜しくね。私は美沙子よ、稲葉美沙子」

「はい。お願い致します」

二人して和んじゃってるよ。いいのか?ホントに。

「でね、沖田さん。まず、その刀だけど。本物よね?」

「はい」

「それを預からせてほしいの」

沖田の顔つきが変わった。

「美沙子さん、それは出来ません」

やっぱり、と思ったのだろう。美沙子が説明を始める。

「この時代にはね“銃刀法”というのがあってね。むやみに刀を持ってはいけないの。見付かるとね“警察”という人に捕まってしまうの。捕まってしまっては帰る方法だって見つからないわ。それにこの時代は歩いていて襲われるなんて、よっぽどの事がない限りはないわ」
< 9 / 234 >

この作品をシェア

pagetop