桜の下で ~幕末純愛~
「ふざけてるんですか?それに、その格好は何?コスプレして不法侵入?」

早く追い出したい気持ちが桜夜の声をだんだん荒げていく。

「こすぷれ?貴女のお話しには解らない言葉があるのですが…」

お互いに話が見えず、次の言葉が見付からなくなってしまった。

「………」

再び、長い沈黙

再度の沈黙を破ったのも沖田だった。

「ともかく、私は京に戻らねばなりません。貴女に迷惑をかけるつもりはありません。道だけ教えていただけませんか?」

「だからっ、新幹線に乗ってください。最寄り駅までは、向こうの道にでも出て、タクシーでも拾えばいいじゃない」

これじゃ、何度言っても変わらないじゃん。

もぉ、やだ。どうしたらいいか分かんない。

その時、門を開ける音が聞こえた。

「桜夜。ただいま。あら?まだ帰ってないのかしら?桜夜?」

お母さんだっ。今日は早く帰るって言ってた!

美沙子の声が近づくにつれホッとした桜夜は涙が溢れてくる。

「おかぁさぁ~んっ」

ありったけの力を振り絞って叫ぶ。

早く来てっ。助けて!

桜夜の涙混じりの声を聞き、庭に駆けつけた美沙子。

美沙子に肩を抱かれ、やっと安心する。

美沙子と沖田が話をしているが、やっと恐怖が和らぎ、会話はあまり耳に入ってこない。

落ち着いた頃に断片的に聞こえた言葉に桜夜は驚いた。

「ぶっ、ぶんきゅー?」

桜夜が大きな声を出したので沖田も美佐子も桜夜を見る。

「どうしたの?大きな声を出して。さ、もう平気よ。安心して」

そう言い、美沙子は沖田に向き直る。

「沖田さん、あなたの話が本当なら、あなたはタイムスリップした事になるわ」

タイムスリップ?お母さん?頭打った?

沖田も首をかしげる。

「たいむすりっぷ、ですか?」

「そうよ。時間を越えて未来にきたの。沖田さんがいた時代から150年以上経っているかしら。沖田さんの時代は過去と呼ばれてるわ」

いきなりで訳分かんなくなってきたよ、お母さん。何、言っちゃってんの?

桜夜はポカンと口を開けて美佐子を見た。

そして美佐子の次の言葉に開いた口が塞がらなくなった。

「とりあえず、あがらない?」
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