桜の下で ~幕末純愛~
美沙子がリビングに沖田を通す。

「さ、ここに座っていてね。今、お茶をいれてくるから」

ソファーに座る様に促し、キッチンへ向かう美沙子に桜夜は付いていく。

「お母さん、何考えてんのよ。あんな歴史マニアあげてもてなす訳?」

自分が言っている事が正当だと思った。

「桜夜、あなたが言うのも分かるけど、お母さんには沖田さんが嘘をついてるとは思えないのよ。それに今まで、お母さんのカンが外れた事は一度もないもの。ねっ」

何だ、その自信。…まぁ、確かにお母さんの言う事はいつも正しかったけど…。

「信じてみようよ。困ってるよ、きっと」

「わかったわよ」

シュンシュンとお湯が沸く音が響く。

「ねぇ。歴史マニアはやっぱり日本茶?」

小さな声で美沙子に聞いてみた。

「何よ、さっきからその【歴史マニア】って。失礼よ。そうね、分からないけど紅茶やコーヒーは無理じゃないかしら?」

美沙子がお茶をいれている横で桜夜はコーヒーを入れた。

二人でお茶を持っていくと、沖田はソファーの上に正座していた。

「ぷぷっ」

桜夜は思わず吹き出す。

そんな桜夜をたしなめ、美沙子が沖田にお茶をだし、言った。

「沖田さん、これは“ソファー”といって、こうやって座るものなのよ」

沖田は見るもの全てが初めてのものばかりらしく、キョロキョロ見回しながら言われた通り、座り直した。
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