金魚玉の壊しかた
「おつるぎ様か」

「ああ」

「薄々そんな気はしていたが──本気なのか?」

「……ああ」


結城家ほどの名家の御曹司ならば、その気になれば殿様の姫君だろうが妻にできる。
手に入らない相手など存在しないかと思ったら──よりにもよって、義理の妹を思い人に選ぶとは。


わざわざそんな面倒な恋に手を伸ばすなど、マゾヒスティックな。

そうツッコミを入れて、

叶わないと理解しつつ遊水に惹かれたり、円士郎に惹かれたり、自分のほうがヒドいじゃないか。

やっぱり自分自身にもツッコミを入れた。


それから、どこか自分に似たこの若者を見上げてクスリと笑った。

「お互い、面倒なものだな……誰かを好きになるというのは」

「……そうかもな」

「私もだよ、円士郎殿」

少しだけ虚勢を張った。

「もしも遊水に出会っていなければ──……でも今はもう、円士郎殿と一緒になっても、たぶん遊水のことを忘れられない」

「遊水と一緒になれたら、俺のことは忘れられるってことかよ」

「そういうことだ」

「このアマ……!」

円士郎が少しムッとした様子を見せて、

私たちは二人で笑って、





一緒に歩めたら、退屈しない楽しい人生になるのだろうと私も思った。
人間としても憧れた。

でも、

円士郎の世界にはおつるぎ様がいて、
私の世界には遊水が既にいる。

そして幸せになれるとわかってはいても、虹庵の愛には応えられなかった。

誰かを好きになるということは、どうしてこう不自由なのかなとほんの少しの悔しさを覚えながら、





私の中でかすかに存在していた円士郎への想いは、終わった。
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