金魚玉の壊しかた
それでも、今はまだ彼が差し伸べてくれた救いの手に──彼という存在にすがらせてもらうことにして

私はすぐさまそれを激しく後悔するハメになろうとは、予想もしていなかった。


遊水と会うのが怖い、どんな顔をして会ったらいいのかわからないと、円士郎の胸にしがみついて吐き出したら、

「遊水は──駄目だ。諦めてくれ」

何の救いもなく、身も蓋もない言葉が降ってきた。

「今さら──っ……」

手遅れだ!
諦められたら、どんなに楽かなどわかっている。
私と彼を引き合わせておいて、何を言い出すのだ!

そう思いながら円士郎の顔を睨み上げて、


いつになく辛そうな──

激しい後悔と苦しみの混ざった瞳が私を見下ろしているのに気づいた。


「円士郎殿……?」


円士郎の様子は少しおかしかった。

私と遊水を引き合わせた責任を感じてくれている、というだけではない何かが、彼の表情には隠れている気がした。


「俺は、あんたにこれ以上辛い思いをしてほしくないんだよ」


円士郎は繰り返した。


「遊水は、駄目だ」

「それは──私が、雨宮の娘だからか」




奇妙な沈黙があった。




それから円士郎は何故か泣きそうな顔をして、ゆっくりと頷いた。


「そうだ。あんたが、雨宮の娘だからだ」


その言葉が本当は何を意味していたのか──


私が戦慄と共に知るのは、まだ先のことだ。
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