金魚玉の壊しかた
「留……ちがっ……これは……」

円士郎が、普段の彼からは想像できないような慌てふためいた声で藻掻くように言って、

「……ご、ごめんなさい」

落とした傘を拾おうともせず、黒い艶やかな髪をひるがえしておつるぎ様が戸口から走り去って行くのを見送り──


私は、円士郎にしがみついて泣いているこの姿が、第三者の目にどう映ったのかを知らされた。



すぐさま離れようとしたけれど、円士郎は私を抱き締めたまま固まってしまっていて、その腕を解いてくれなくて、



遊水は、

まだ戸口に立っている。



じっとこちらを眺めていた翠の双眸が冷ややかなものに変化するのがわかった。

彼が口を開いて、

「いつまで抱き合ってんのか知らねェが……こいつは本当に邪魔したようだな」

吐き捨てるように言って戸口から消えた。



私は目の前が真っ暗になるのを感じた。
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