金魚玉の壊しかた
つられてそちらを振り仰いで、私は凍りついた。


「そうかい。よくわかった」

「遊水……」


久しぶりに見る懐かしい金の髪と緑色の眼差しが、そこにあった。

初めて会った時のような棒手振の法被姿で、頭には被り手ぬぐいをして、遊水は優しい微笑を湛えてそこに立っていた。


「亜鳥が決めた道だ。俺が口出しするべきことじゃない」

「遊水、私は──」


言葉を詰まらせる私を見て、池のそばに座り込んでいた円士郎が、席を外そうかと言った。

私はそれを断って、


「ありがとう」


遊水に礼だけ告げた。


「あなたに会えて良かった。あなたのことは、絶対に忘れない」


そうしたら

ふふっと、遊水は自嘲気味に笑って、


「いいや、忘れてくれ」


そう言って、


遊水なんて男は、初めから存在しなかった、

そう思えと


言い残して去っていった。


私はその背中に何か言おうとしたが、
黙ったまま両手を握りしめて見送った。


一言でも発したら、ぎりぎりで真っ直ぐ立っているこの心はたちまち折れてしまうような気がした。
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