金魚玉の壊しかた
父が死を遂げる原因となった男のもとに嫁ぐ。
笑える話だ。
父上、見ておられますか。
あなたの娘は、あなたが雨宮を没落させたせいで、あなたが最後まで憎しと言い続けた者の妻となるのでゴザイマスヨ……。
一年も前、町中でぶつかった男たち相手に、目の前に連れてこい、そうすれば彼の前で喉を突いて見せてやるとまで言った──
その忌々しい権力者の目の前に、言葉通り立てるわけである。
祝言の最中に花嫁が喉でも突いて死んだら、さぞかし面白い見せ物になるだろう。
そんな妄想を楽しんで、
しかしそれも許されないと冷静にわかっていた。
何事もなく、婚儀を終えて伊羽家の正妻の座に納まることでしか、雨宮の家は救えないのだ。
それに──私とて、伊羽青文がこの国始まって以来の善政をしいていると言われていることや、不正に厳しく公正な人間であるということくらい聞いて知っているし、
雨宮家のお家取り潰しを免れた際の恩義があることは承知している。
そもそも向こうが被害者だという叔父の言葉こそもっともで──
──と、私はそう考えていた。
五年前の真相が、私たちの知る事件とは全く異質なものであったことなど知る由もなく、
伊羽青文という男が、いかにして若くして家督を継いだのか。
その時に騒がれた伊羽家の連続不審死のことも、すっかり忘れていた。
笑える話だ。
父上、見ておられますか。
あなたの娘は、あなたが雨宮を没落させたせいで、あなたが最後まで憎しと言い続けた者の妻となるのでゴザイマスヨ……。
一年も前、町中でぶつかった男たち相手に、目の前に連れてこい、そうすれば彼の前で喉を突いて見せてやるとまで言った──
その忌々しい権力者の目の前に、言葉通り立てるわけである。
祝言の最中に花嫁が喉でも突いて死んだら、さぞかし面白い見せ物になるだろう。
そんな妄想を楽しんで、
しかしそれも許されないと冷静にわかっていた。
何事もなく、婚儀を終えて伊羽家の正妻の座に納まることでしか、雨宮の家は救えないのだ。
それに──私とて、伊羽青文がこの国始まって以来の善政をしいていると言われていることや、不正に厳しく公正な人間であるということくらい聞いて知っているし、
雨宮家のお家取り潰しを免れた際の恩義があることは承知している。
そもそも向こうが被害者だという叔父の言葉こそもっともで──
──と、私はそう考えていた。
五年前の真相が、私たちの知る事件とは全く異質なものであったことなど知る由もなく、
伊羽青文という男が、いかにして若くして家督を継いだのか。
その時に騒がれた伊羽家の連続不審死のことも、すっかり忘れていた。