金魚玉の壊しかた
男をも凌ぐ達人だというおつるぎ様や、円士郎ならば切り抜けられる場面なのかもしれないが、

私には懐剣一本で十人相手に立ち向かえるような武術の腕はない。


誰にも言わずに出てきたし、ここへ来る途中でも誰にも会っていないから、家の者にもここに私がいることが伝わる可能性は皆無だ。



完全に囲まれて退路は断たれていたが、私は懐剣に頼って何とか包囲を抜け出し、この場から逃げることを考えた。

意を決して、懐剣を振り回しながら飛び出し、

距離が縮めてくる男たちの合間を縫って走り去ろうとした。



──が、



甘かったようで、たちまち着物の袖を捕らえられ、懐剣を振り回す腕を押さえつけられて

武器を取り上げられ、


血の気が引いた。


後ろから羽交い締めにされ、無礼者! と叫ぼうとしたが喉が引きつって声が出なかった。

その時──



「無礼者!」



聞き覚えのある懐かしい声が、耳に飛び込み、

私を羽交い締めにしていた男が吹っ飛ばされて、

私は自由を取り戻し、たたらを踏んだ。


「失せろ! この方は、てめえらみてえな連中がどうこうしていいような身分の人じゃねえ」


私の腕を引っ張って、背中に引き込みながらそう怒鳴る法被姿の金髪の棒手振を、私は信じられない思いで見上げた。
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