金魚玉の壊しかた
「遊水?」


どうして、彼がここに今現れたのかわからず、夢だろうかと思った。


「チィ……雇われ者に見えても、町のチンピラ相手じゃねェか。さすがにこんな言葉は効かねえな」


遊水の怒喝に対してずらずらっと一斉に刀を抜いて構える浪人たちを見回し、彼はそんな風に舌打ちした。


ぼうっとしている私に、こいつら亜鳥を殺してもいいと思ってやがるんだな? と小さく訊いて、

私の答えも待たず、

「俺から離れるな」

と囁いて、私を庇う位置に立ったまま、手にした棒天秤の竿を構えた。


見ると、少し離れた場所には赤い魚の入った桶が二つ置かれていて、彼は仕事の途中に通りかかったという様子だった。

ますますもって私にはわからなかった。

金魚を売る仕事で、どうして遊水はこんな刻限にこんな場所を通りかかるのか。


混乱している間にも、一番近くにいた浪人が刀を振りかざして斬りかかってきて、私は思わず身を固くした。
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