金魚玉の壊しかた
「遊水……」

自分の知る彼とは別人のように見える冷たい翠の眼の男を私は見つめた。

ふっとその表情が柔らかなものになって、

「まったく、何をやってンだ」

彼はあの日のような優しい笑みを私に向けた。

「どうして……あなたはここに……」

やや離れた場所に置かれた桶を見やって、まだ信じられない気分で尋ねると、遊水は手にした棒を桶のそばに置いてきて、困った様子で、「俺はたまたま通りかかったんだ」と言った。

こんな場所を……?

私は訝ったが、遊水はそれ以上何も答えてくれなかった。

「酷いことされなかったか」

彼は心配そうに私を見つめて、そっと私の頬を撫でて、

「怪我は? してないかい?」

と言った。


彼に触れられた途端に動悸が跳ね上がり、封印したはずの感情がこみ上げて、

張りつめていた氷が割れ、水が溢れるようにそれは押さえきれなくなり


視界が滲んだ。


気づけば、遊水の胸に顔を埋めていた。


彼が私の体を抱き締めて、

「無事で良かった……」

と、囁いた。
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