金魚玉の壊しかた
りい、りいと夏の虫が鳴く屋敷への道を歩きながら、おつるぎ様は円士郎と同じように納得できていない様子で

「鳥英さ……亜鳥さんは、本当にそれでいいんですか」

と訊いた。

「遊水さんのことが、好きなんでしょう?」

どこか必死に言うこの可愛らしい少女を見て、私は微笑んだ。

「それが武家に生まれた女の務めなのだよ」

「でも! だからって……亜鳥さんにとって、伊羽様は──……っ」

何か言いかけた様子で、ハッとしたようにおつるぎ様は言葉を飲み込んだ。

そのまま、大きな黒い瞳で前方を睨むようにして歩き続ける少女に、私はふと尋ねてみた。


「桜と蓮……」

「えっ?」

「いや。おつるぎ様は、桜と蓮の花っていう組み合わせには、何の意味があるのかわかるかな?」


おつるぎ様は大きな目をパチパチと瞬かせて、うーんとうなった。


「なんだろ? あ、でも……」

「でも?」


おつるぎ様は、えへへと笑って、


「私が好きな花と一緒だ」


嬉しそうに言った。
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