金魚玉の壊しかた
「桜と蓮。私の一番好きな花が桜で、二番目が蓮の花。
昔、エン──兄上にも言ったことがあって……でも、もうきっと忘れちゃってるだろうなあ。花には全然興味ないんだもんなあ」


そう言うおつるぎ様をポカンと眺めて、私は笑いがこみ上げた。

「そうか……何だ、やっぱりそういうことか……!」

あのカブキ者を気取った若い侍の、照れて拗ねたような顔を思い浮かべて、私はクスクス笑った。

「え?」

キョトン、とおつるぎ様が首を傾げる。


本当に、私と円士郎は似たもの同士だったようだ。


ひょっとして、円士郎に傷薬を持たせたのもおつるぎ様だろうかと、彼と出会った日のことを思い出しながら尋ねると、

「だって、面倒事が好きでいつも首を突っ込むから……」

少女は困ったような笑顔を浮かべてそう答えた。
案の定だ。

その目には、薬のことを訊いた時の円士郎と同じように、優しい光が揺れていた。


「おつるぎ様」

屋敷の前まで辿り着いて、私は純真無垢な少女に言った。

「おつるぎ様は、本当に好き合った相手と一緒になって、幸せになれるといいな」



そうして、次の日──

私は城代家老伊羽青文のもとに輿入れした。
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