金魚玉の壊しかた
しかし、声も変えていたのだがなと遊水は──いや、金髪緑眼の伊羽青文という男は、覆面を拾い上げながら言った。


「亜鳥にすぐさま見破られるとは思わなかった。

宴の時から気づいていたな。どうして気づいた? いつからだ?」


「手が──」


「手?」


私は彼を見つめたまま、何とか掠れた声を出した。


「手を見た時だ……。あなたの手だった」


青文は絶句して、


やがてははは、と可笑しそうに肩を震わせた。


「手か……! それは考えたことがなかった。
さすが、絵を描いている者は見ているものが違うな」


見慣れた顔で、
声で、
しかし全く違う口調で喋る彼の様は、本当に武家の人間だったのだと私に思い知らせた。


「そうじゃない!」


笑い続ける男に、私は叫んだ。


「絵を描いているからじゃない! 手だけじゃない!

例え顔が見えなくとも、声を変えていても、自分が本気で恋した相手なら、隣にいてわからないワケがないだろう!

私が、あなたを好きだから、気づいた!」


青文は笑うのをやめて、「亜鳥……」と小さく呟いた。


「私を好きなのではない。お前が好きだったのは『遊水』だ」
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