金魚玉の壊しかた
あの七不思議を、私は誰から聞いた?

遊水からだ。
また、他家の娘も彼から聞かされたと言っていた。


「遊水として屋敷を抜け出し出入りする際、私はこの脱出用の経路を使っていた。
昨日も屋敷に戻るために、たまたまあの刻限に井戸のあるススキ野を通りかかったら──亜鳥が襲われていた。

怪談を流しておけば、近寄る者もいないだろうと思っていたのだがな」


「では、あの怪談自体が──あの場所から人目を遠ざけるため、あなたが作って広めたものだったのか?」


そこまで、仕込んでいたとは──。


操り屋とはよく言ったものだと思った。
町人に扮して城下の噂を操るというやり方は、実に巧妙だ。


「円士郎殿たちに知らせたのは……」

「私の隠密だ。外で何かあった時や、後をつけられた時に妨害させるための工夫を、あのような形で使うことになるとは私も思わなかった」

「隠密……」


脳裏に、遊水が毒にやられて私の長屋に運び込まれた時、夜中に戸口でボソボソと話していた相手が浮かんだ。


「では、あれは──」


私がそのことを指摘すると、彼は「なんだ、気づかれていたのか」と言って、
また笑ったのか、流れていた空気が少し緩んで、

私はホッとした。


「家老の職にあるものが、屋敷から消えて数日連絡がつかなくては大騒ぎになるだろう?
あの時は、万一に備えて前もって打ち合わせてあったとおり、部下の宮川中に覆面を被らせて、しばらく私の身代わりをさせるよう指示を与えていた」

素顔を知られていない覆面姿というのもたまには便利なものだ、と彼はおどけてみせた。

「毒消しを持ち歩いていたのも、重役にある者が故の──毒殺に対する用心だったのか……」


これまでよくわからなかった彼の行動に関する数々の謎が、ようやく氷解していくのを感じた。
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