金魚玉の壊しかた
漆黒の闇の底に向けて、木で作られた先の見えない階段が続いていた。


「私が緋鮒の仙太と呼ばれ、盗賊として名を馳せたのは十から十二になる年までのおよそ二年間」

「十から十二まで……!?」


私は衝撃を受けて、淡々と語る白い横顔を見つめた。

階段の先の闇へ据えられていた瞳が私のほうを向き、白い口の端がわずかばかりつり上がった。


「子供の遊びでは済まされぬ真似だったがな。私にとっては、いたずらの延長のような感覚で──人を操り、欺いて、大金を手に入れることを楽しんでいた」


そんな真似を遊び感覚で行う子供がいたとは──


この若さで城代を務めるこの男の頭脳が如何に非凡で抜きん出たものであるか再認識させられ、私は愕然とした。


「驚くことはない。亜鳥も知る結城のおつるぎ様とて、十二の歳でその盗賊を六人も斬り殺し、剣才を認められて結城家に迎え入れられたのだからな。
子供にとって、どちらが容易き真似なのかは判じかねるが……」


そんな真似は、どちらも普通の子供には無理に決まっている!

私は胸の中で突っ込んで、


「そのまま盗賊を続けておれば良かったものを──」


再び闇の底へと視線を落とした彼の表情が歪むのを見た。


彼は扉の縁に手をかけ、ぎしぎしと軋むその階段を降り始めた。

一瞬、この先に彼と共に進んではならないような──そんな感覚に囚われたが、私はためらいながらも彼に続いてその真っ黒な地の底へと降りていった。
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