金魚玉の壊しかた
「それまでは? そんなことができそうな子供が家中にいるとどこかで聞いたことがあったか?」

「……なかったが……」

「伊羽青文という人間が伊羽家の子供だったことすら家中の誰も知らず、あたかも忽然と現れた者のように、どこでどのように育ったのかも誰も知らない。

家中ではそう言われているな」


蝋燭のオレンジ色の光によって、闇の中には、漆喰の塗られた頑強そうな扉が浮かび上がっていた。


「何だ……ここは……?」


干上がった喉で、私は尋ねた。

何かとてつもなく嫌な予感がしていた。


「ここか? ここはな……」


横に立った彼の口から、前に長屋で耳にしたものと同じ、狂気じみた哄笑が漏れ出でた。


「伊羽家に迎え入れられてより後、十五の歳で人前に現れるまで、私が閉じこめられて育った──座敷牢だ」



時間が



凍りついた。



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