鏡の中のアタシ。
里菜にはわからなかった。
自宅に帰ってきてから、里菜はずっと考えていた。
いつものビールも、全然入っていかない。
タバコも吸っている。と言うより、燃やしてるの方が近い表現なんじゃないかってほどだ。
「はぁー…」
ベランダの手すりに手をかけ、ぼーっと月を眺めていた。
ピリリリリリ…
「あ、美緒…」
こぉゆうタイミング自体ものすごく美緒らしい。
里菜は笑いながら電話を手にする。
「はいはい、もし−?」
「あ、里菜?何してたぁ?今日の報告聞こうと思ってさ♪そろそろ告られたんじゃない?」
「あー…うん。」
「なに〜?じゃぁ作戦成功じゃない♪そのわりには浮かない返事ね?」
美緒と里菜にとって、里菜の作戦成功は、普段なら祝杯のはずだった。
「返事、待ってもらっちゃった…」
「まじで!?珍しい…」
美緒が驚くのも無理はない。
ターゲットをしぼって、リサーチして、彼女になるために頑張る里菜が、告白を断る理由も、ためらう理由もなく、いままでにだって、例外なんて無かったからだ。
「………」
「………」
2人とも電話越しに無言だった。
美緒も何も聞いてこない。
里菜も何も話さない。
2人には、それでも通じあえるなにかがあるんだ。
「美緒が男の子だったらなぁ…」
しばらくして、里菜はそうつぶやくき、美緒もそれを笑い飛ばして、2人は電話を切った。