鏡の中のアタシ。

里菜にはわからなかった。


自宅に帰ってきてから、里菜はずっと考えていた。
いつものビールも、全然入っていかない。

タバコも吸っている。と言うより、燃やしてるの方が近い表現なんじゃないかってほどだ。


「はぁー…」

ベランダの手すりに手をかけ、ぼーっと月を眺めていた。


ピリリリリリ…

「あ、美緒…」

こぉゆうタイミング自体ものすごく美緒らしい。
里菜は笑いながら電話を手にする。

「はいはい、もし−?」

「あ、里菜?何してたぁ?今日の報告聞こうと思ってさ♪そろそろ告られたんじゃない?」

「あー…うん。」

「なに〜?じゃぁ作戦成功じゃない♪そのわりには浮かない返事ね?」

美緒と里菜にとって、里菜の作戦成功は、普段なら祝杯のはずだった。

「返事、待ってもらっちゃった…」

「まじで!?珍しい…」

美緒が驚くのも無理はない。
ターゲットをしぼって、リサーチして、彼女になるために頑張る里菜が、告白を断る理由も、ためらう理由もなく、いままでにだって、例外なんて無かったからだ。

「………」
「………」

2人とも電話越しに無言だった。
美緒も何も聞いてこない。
里菜も何も話さない。

2人には、それでも通じあえるなにかがあるんだ。

「美緒が男の子だったらなぁ…」

しばらくして、里菜はそうつぶやくき、美緒もそれを笑い飛ばして、2人は電話を切った。
< 15 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop