鏡の中のアタシ。
「里菜、聞いてくれ。」
雄也が、改まって話を切り出した様子をみると、里菜も姿勢を正した。
「明日香は、本当にただの後輩なんだ。春からうちの大学に入ってきて、いつの間にか、一緒につるむようになった。」
そこまで話すと、水を一口のみ、続けて話す。
「正直告られた事も何度かある。でも全部断ってる。」
一瞬里菜は、俯きかけたが、ちゃんと聞かなければならない。と、顔を下げなかった。
「いつの間にか、まわりにいる女友達とも距離が出来てきていたから、何かあるのは気付いてた。」
雄也は、自分のまわりのことに気付いていながらも、明日香が動いているせいだとは、気付いていなかった。
「それの原因が明日香だと気付いたのは、最近だ。」
雄也は、そこまで話すと里菜を真っすぐ見た。
里菜は、目をそらさないながらも、胸中は、うるさくみだれていた。
「明日香は、策士かだ。俺の話を信じてほしい。」
雄也の真剣な瞳の奥に、困惑する里菜の姿が写っていた――――。
最後に笑顔を見たのはいつのことだろう…。
里菜には笑っていてほしいのに…。
雄也は、里菜を見つめながらそんな事を思っていた―――。