問題アリ(オカルトファンタジー)




段々と脚から腰までが粉になって風に飛ばされて消えていく。


この期に及んで言い合いを始めた二人に、不思議とチェスは頭を抱える気にも、言い合いを中断させる気にもならなかった。


数十年前ならばこの後に魔術大会が起こったりして、それはそれは胃に穴が開くのではないかと思うほどに悩まされたのだが。


これが二人なりの友情なのかと漸く気づいたチェスは黙って聞いていた。



「俺が居ないからって夜泣きすんなよ…」



「誰がするか。もう戻ってくるな、お前はうるさい」



「はは、…そだな、…楽しかったけど…もういいや……暇すぎる…」



腰から胸がサラサラと風に流されていく。


手の平に掴んでも、指先を通り過ぎて、生きようと、生まれ変わろうと、もう一度のチャンスを掴もうと高く、高く、空へと飛び上がっていく。


別れだと言うのに、フィンは酷く穏やかに笑っていた。


長い長い鬼ごっこの末に見つけた、時計塔で出会った最初で最後の、温もりを見つけたときのように。


暖かさと、安心感と、幸せを掴んだように。


チェスはただ、ボロボロと泣いていた。リオンは相変わらず何を考えているのかわからない無表情。



「……また、会えたら…いいな…、そん時俺は忘れてるだろうけど……無視すんなよ…」



「約束はしない。…が、チェスが気づいたらきっと話しかけるだろう」



「頼んだぜ、チェス君……」



もうフィンにはチェスの涙を拭う手もない。涙で声が出ないチェスは、必死に何度も何度も頷く。


それを見て満足そうに笑うと、フィンは目を閉じて光の粉となって空へと溶けていった。



「…忘れたくねぇな……」



と、少しだけ寂しそうに笑いながら。





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