問題アリ(オカルトファンタジー)
丁度、太陽が世界を照らした瞬間のことで、それは言葉に出来ないほどに美しい、朝日の中の出来事だった。
チェスの嗚咽が酷くなり、鳥たちは何事かと木の上で話し合う。
太陽は徐々に世界へと顔を出し、光を与える。
また、いつもと同じ朝が来る。毎日の繰り返し、太陽が昇り、沈んで、月が顔を出し、星がちりばめられ、そして、また太陽が昇る。
ただそれだけのこと。
それだけの中に、素晴らしいことを、切ないことを、繰り返す毎日。
誰かと出会い、別れ、傷を抱き、傷を捨てて、忘れて、進む毎日。
赤い風が吹いた。
チェスは気付かないままで地面をその涙で濡らしていたが、リオンはフィンが溶けて消えていった空を見上げる。
クリスがフィンの魂を労わるように抱きしめてから、手を伸ばしてその魂を高く高く空へと送った。
それから、ふとリオンに気付いて視線を向けるクリスにリオンは顔を逸らすと部屋へと戻っていった。
ふふ、と笑うとクリスは鉄塔の骨組みの一箇所に身体を潜らせる。
その姿は、たった数十センチの骨組みを通っただけで、消えた。
リオンが居なくなった事も、クリスが居た事も知らず、チェスは暫くその場で、何一つとして残していかなかったフィンが横たわっていたそこへと、呆然と視線を落としていた。
ボロボロと、こんな大粒の涙が落ちたのはいつ振りだったろうかと思うほどに、涙はとめどなく流れている。
ふと、小さな羽根をバタつかせながら舞い降りてきた鳥がフィンのいた場所に降り立って、地面をつつく。
そこに、一つ、石ではない何かが落ちていた。