問題アリ(オカルトファンタジー)




「だめ!」



鳥を追い払って、食べられそうになっていたそれを摘みあげて手の平に乗せる。


柿の種だった。


チェスはそれをポケットに入れて倉庫からスコップを取り出すと庭先に穴を掘って、そこに白いペルシャ猫と柿の種を埋めた。


庭先に出てきたリオンはその手に紅茶のカップを二つ手にしていて、その一つをチェスへと差し出す。


それを泥だらけの手で受け取りながら、チェスは猫と柿の種が埋まったそこへと目を向ける。



「戻らないんだね、人が死んだら。…終わりなんだ」



「わかったか」



チェスは自分の宝箱の中でまだ動きを止めない両親の心臓を思い返して呟いた。


例え核を持っていたとしても、それがまだ動いていたとしても、なくなったものは、戻ってこないのだと。


これでいいのだと、思って取り出した心臓が、無意味だったことを、人の死と言う恐ろしく莫大な喪失感を、やっと気づいた。


ただ、呆然と。



「リオンも、いつか消えるの…?」



「未定だがな。この世に永遠はない。それは、俺たちにも言えることだ」



「リオンが消えるまで一緒にいるよ」


は?と、何とも無感動で失礼な言葉を返したリオンに、チェスはリオンが数百年ぶりに淹れてくれた紅茶を啜りながら答える。



「お別れを言う対象になってあげるよ、リオンあんまり友達いないから」



「………」



物言いたげなリオンにチェスはふふふ、と笑い声をもらしながら、新しく出来た友達が早く育って、数年後にはオレンジの実を付けることを祈った。


そうすれば何も寂しくはない。食べれば思い出せる。


リオンとの言い合いも、魔術合戦も、ニヤニヤとした、あの笑顔も。


庭に新しく出来た掘り返された跡を眺めながら、リオンは視線を合わせないチェスに何かを返すこともなく、紅茶を啜ると部屋の中に入った。





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