ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
あの女が付けたとすれば、何かの術なのは間違いないだろう。だが一体何の術なのか。

(例えばこの部分から腕が腐っていく、とか。
何らかの病原菌が全身に転移しまくったり、突然燃えたり凍り付いたり勝手に変な方向へ曲がったり、触手のようなものがニョキニョキと生えてきたり……とか?)

最悪の事態を色々と想像してしまい背筋も寒くなったが、その考えを振り払うかのように直ぐさま頭を振った。

(駄目、弱気になったら。それに……そうだ、意識を失う前にあの魔物が言っていたじゃない)

私は思い出した。

彼女は確かにこう言っていた。

「今回は特別に延命させてやろう」と。

つまり私たちがあの魔物に殺されなかったのは、今回は特別に見逃してもらったから、ということになる。そこにアレックスの能力が関係していることは、女の最後の捨て台詞からも明白だった。

だとすればこの術は、直ぐに発動するようなものではないのかもしれない。勿論「魔物の言葉が真実」だというのが、前提条件ではあるが。

(でも待って)

ここで私は矛盾点に気が付いた。
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