君の瞳に映る色
足元から吹き上げる強い風、
下に見える小さな人や車。
恐怖に思わず玲の服を強く掴む。
玲は棗をしっかりと抱き締め
耳元に顔を寄せた。

「このまま夜の空を散歩する?」

そう囁くと、

「やめて!早く降ろしなさい!」

怖いのか自分の胸に顔を
埋めたまま棗は叫ぶ。
予想通りの反応がおもしろくて
玲は笑った。

ひとけのないホテルの裏庭に
玲はゆっくりと着地する。

「俺以外の男に襲われるなよ」

冗談交じりに玲は言ったが、
棗は玲の腕を振りほどいて
鋭い視線を向ける。

「あんたの所有物みたいに
言わないで!だいたいあそこで
何してたのよ」

「何って…ホテルでやることって
1つしかなくない?」

言って玲はニヤッと笑った。

「それよりお嬢様は
すごい格好だな」

玲は棗を苦笑いして見る。
棗は今になって自分の状態に
気付いた。
解けたリボンは前に垂れて
胸元がはだけている。
ファスナーも途中まで下がり
ドレスはずり落ちそうな
状態だった。
棗は慌てて腕で身体を覆う。


「腕、どけろよ」

< 112 / 352 >

この作品をシェア

pagetop