君の瞳に映る色

口元の笑みとは対照的な
冷たい瞳に肌が粟立つ。
閉まっていく扉に背を
付けるようにして後ずさった。

「君はどうしても僕との約束を
守れないらしいな」

櫂斗は捻り上げるように棗の
左の手首を掴む。

「…っ…」

目前に突き付け、黙ったままの
棗に「指輪はどうした?」と、
低い声が問い掛けた。

ポケットに忍ばせたままだった
指輪を棗は取り出す。

「…お返しします」

櫂斗の顔を見ることができずに
棗は目を逸らした。

手首を掴む手に力がこもる。

「君はもっと利口な女かと
思っていたよ」

笑みの張りついた顔が
近付くのが気配でわかる。

息のかかる距離で囁くように
櫂斗は呟いた。

「あの男が何者なのか
知ってるのか?我々の社会に
混じった下等な生き物だ」

「…あなたも同じ
ヴァンパイアでしょう」

射抜くような鋭い視線で棗は
櫂斗を見据える。

思わず口にした言葉に櫂斗の
顔から一瞬笑みが消えた。




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