君の瞳に映る色


「文化祭の予算案と資料、あと
欠席の間の配布物」

無言で紙の束を受け取りながら
玲は盛大な溜息を漏らした。

その横に立つ棗に瑠璃は
近寄った。

「…おかえりなさい」

「ただいま…メガネやめたのね」

相変わらず長めの前髪が顔を
隠しているものの、
彼女の顔にはメガネがなかった。

棗の言葉に瑠璃ははにかんだ
笑顔を見せる。

「高槻さんと一緒ってことは
婚約は…?」

伺うように効いてきた瑠璃に、
なくなったのよ、と答えた。

「よかったですね!」

瑠璃の大きな瞳が輝く。
自分のことのように喜ぶ瑠璃に、
思わず顔が綻んだ。

「ありがとう」

「ホントに、…良かったぁ…」

「…なんで泣くのよ」

苦笑いしながらハンカチを
差し出す。

温かい色を胸に感じながら、
棗は目を伏せた。





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