君の瞳に映る色
色を見る力なんで欲しくて
身につけたわけではない。

色が見えるせいでこの男の正体を
知ってこうして付き纏われている
というのに。

玲からは闇夜にオーロラが
漂うようにいろんな色が
横切るのが見える。

色が混じると
感情が読み取りづらい。

「でもお嬢様、
みればみるほど美人だな」

気付くとすぐ横に
玲の顔があった。
あまりに驚いて、よらないで、と
言葉が出る前に棗の右手は
玲を叩いていた。
乾いた音が部屋に響く。

「~~~~~~っ」

頬を押さえながら玲は棗を
睨んだ。
笑みが消え瞳が鋭く光る。
自分は悪くない、そう主張する
ように棗も睨み返した。

「いきなり顔を近づけないで」

棗は肘掛が背中に当たる位置まで
身を引いた。
玲は機嫌の悪そうな顔でそれを
じっと見ている。

俺は人のものに興味はない、と
玲はきっぱりと言い放つ。

口の端を上げて俺のものになる
女が好きだから、と言った。
その言葉に棗は顔をしかめた。

「婚約してるんだろ?お嬢様は」

言われて母と話をしていた時に
玲もいたことを思い出す。

顔すら見たことのない婚約者。
母の決めた相手。
棗は玲から顔を背けて
目を伏せた。






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