君の瞳に映る色
「そうよ…でもわたしは誰の
ものにもならないわ」

呟くように言った棗の声は
微かに震える。

「………」

大変だね、お嬢様も。と
言いながら玲はおもむろに棗の
頬を両手で挟むと摘まんで
引っ張った。

「ふぁっ…」

痛くはないが今まで受けた事の
ない行為に棗は目を丸くする。

「ふぁい、ふ…」

何するの、そう言いたいのに
うまく言葉を紡げない。
恥ずかしさと悔しさで
棗は泣きそうになった。

そんな棗を楽しげに
玲は見つめている。

悔しくて悔しくて、
罵声を浴びせて一発叩いて
やりたいのに頬を掴む腕が邪魔で
それもできない。

「せっかくの美人がずっと眉間に
しわ寄せてたらもったいないし
その膨れっ面もビミョー」

「ひゃ、ゃめふぇ…っ!!」

精一杯の力で腕を叩き
ようやく開放される。
棗は肩で息をしながら
玲を睨みつけた。
その瞳にはうっすら涙が
溜まっている。





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