君の瞳に映る色
棗はなすすべもなく
ただ息を呑んだ。
吐き気がする。
膝がおかしいくらいに震えた。

「なに…したの…」

震える声は擦れて途切れた。
それに答えることなく
玲は棗に視線を移した。

「なにしたのよ!」

悲鳴のような声が
生徒会室に響く。
玲は薄く笑って
自分の心配しろよ、と言った。
どうしようもない怒りが
込み上げてきて棗は玲を
睨みつける。

「記憶がなくなっても
絶対取り戻してあんたを
引っ叩いてやる!」

玲は一瞬驚いた表情を見せたが
いきなり笑いだした。

棗は呆気にとられて笑う玲を
見ていたがだんだんとバカに
されているのではという気分が
込み上げる。
そんな棗にお構いなしに
玲はひとしきり笑うと
髪を撫でるように棗に触れた。

「そんなに大事な友達?」

そう聞かれて棗は
固まってしまった。

友達、じゃない、…けど。
なんなんだろう。

頭の中で考えがまとまらないまま
無言の棗を、肯定の意味に
取ったのか玲は顔を寄せてきて
囁いた。

「あの子を傷付けたくないだろ」

心臓が嫌な音を立てて鳴った。




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