紅芳記
ひと月もしないうちに、私の身体はすっかり回復しました。
今宵は姫を産んでから、初めて殿と床を共にすることとなっております。
なにぶん久方ぶりなものですから、妙な緊張を覚えます。
「小松、まんは?」
「乳母のユキに預けております。
もう眠っておりましょう。」
「そうか。」
「まんは夜泣きが酷いようで、ユキも大分疲れた様子にございます。」
「ははっ。
そなたに似たのであろう。」
「まあ!
それはどういうことにございますか?」
「お転婆じゃと申しておるのよ。」
「なんとお酷い。
殿に似たのでございましょう。」
「顔のつくりは、であろう?」
「もうっ!」
私は殿に背を向けて掛け物を頭まで被りました。
「拗ねるでない。」
殿は笑いながら私の褥に入ってきてしまわれました。
私はもぞもぞと、殿から逃げようといたしますが、結局、殿の腕に捕まってしまいました。
「そなたに似たら、きっと美しゅうなる。
素晴らしい姫になる。」
耳元でそう囁かれ、寝巻の帯を解かれました。
「殿に似たら、きっと聡明になりましょう…」
殿はふっと笑われ、口づけをされました。