紅芳記
「奥方様っ!」
寒いと言うのに、汗をかき、顔を真っ赤にして仲橋が部屋に飛び込むように来ました。
「仲橋、如何した。
そなたらしゅうものう、かように慌てて。」
「お、お夢の方様が、産気付かれました!」
「まことか!?」
「お殿様も、城下の僧をかき集めて祈祷を始めていらっしゃいます!」
「私も、仏間に行き、急ぎ祈祷をしたい。」
「はい、是非!」
「仲橋、そなたらはあちらの手伝いをせよ。
手はいくらあっても足りぬ筈じゃ。」
「承知つかまつりました。」
仲橋はまたパタパタと慌てて出て行きました。
私も仏間へと足を進めます。
仏間には、既に殿がいらっしゃいました。
「小松、そなたも祈ってくれるか。」
「はい。」
殿と隣り合い、二人で夢の御方様のご安産を祈るばかりでございます。