紅芳記

一体全体何があったのでございましょう。

不思議に思っておりますると、バタバタと向こうから殿方が走って参られます。

「利世!!
待て、儂が悪かったっ!!」

大声で利世殿を呼び止めようとするその殿方とは、源次郎殿にございました。

「いいえ、待ちませぬ!!」

「頼む、行くでない!!」

「嫌にございますっ!!」

「利世っ!!」

二人とも私達が居るにも関わらず、大声で喧嘩を始めてしまいました。

それをお止めになったのは我が殿でございます。

「まあ二人とも落ち着け。
何があったと申すのだ。」

お二人の間に立って喧嘩を止めさせ、そのまま二人を部屋に押し込めてしまいます。

殿について、私もその部屋へと入りました。


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